2007年05月28日
医者の出張
皆さん仕事で出張するときに自分のお金で旅費やホテル代を出すなんて考えたこともないですよね。ところが医者の世界は違うのです。病院によって違いますから一概には言えませんが、私の病院では1年に1、2回だけ病院で学会に行く旅費を出してくれますが、後は全部自分持ちです。今まで幾つかの病院に勤務しましたが同様です。厚労省や文科省の研究費をもらっている場合はそこから出したりします。ちょっと有名になると学会から招かれて相手持ちで学会に行くこともあります。でもそういうケースは稀ですから殆どが自費になります。医者で国際学会でフランスへ行って発表などと聞くといかにもかっこ良く聞こえますが、内実は火の車でやりくりして旅費を捻出しているのです。ではなぜそんなにまでして学会に行くのでしょうか。学会では最近の標準的治療や新しい医療を学びます。また自分の研究成果を発表したり、座長と呼ぶ司会をしたり、知り合いと情報交換をします。それもこれも患者さんの病気を治そうという気持ちが動機です。同じ動機から病院で遅くまで患者さんを見ていても特別残業手当がつくわけではありませんし、新聞にもでていましたが当直をしても翌日は平常勤務です。ほとんどボランティアの世界です。そんなわけで医者も大変なのだと分かっていただけたらと思います。
2007年05月14日
腰椎椎間板ヘルニアには水分補給
といっても腰のヘルニアは水を飲めば治ると言う話ではありません。
日本人の80%が一生に一度は腰が痛くて病院へ行くそうです。腰痛の話は2006年9月のコラム「腰にまとわりつくテリア犬」でも書きましたが、ちょっとおさらいをしましょう。腰痛の大部分は筋筋膜性腰痛で、筋肉が痛む状態で、いわゆるぎっくり腰の大部分がこれに入ります。他にも若いときに運動をしていた人の腰椎分離症、高齢で骨粗しょう症になった人の圧迫骨折などがあります。腰痛でも大腿部から下腿の裏がびりびりする坐骨神経痛や、足首がだらんとする麻痺が起こったりした場合は腰椎椎間板ヘルニアの疑いが強くなります。腰の骨は5つありますが椎間板は骨と骨の間にあってクッションの役割をしています。これがつぶれて背骨の後ろに飛び出すと神経を圧迫して痛みや麻痺を起こすのです。痛みはせきやくしゃみでひどくなりますが、横になると軽くなります。ひどくなると尿がでなくなったり、ひどい便秘になったりします。これを膀胱直腸障害といいます。
診断はMRIでわかりますが、複雑なものでは脊髄造影(ミエログラフィー)も必要になります。ヘルニアが起こるのは第4と第5腰椎の間、第5腰椎と第1仙椎の間に多く大部分が腰の下のほうです。
腰椎椎間板ヘルニアで手術をしたという話をよく聞きます。ヘルニアというと手術と考ると思いますが、まず最初は保存療法です。1-2週間の安静、鎮痛剤投与、ステロイドの硬膜外注入、ブロック注射などがあります。この保存療法で70-90%の人で痛みがなくなり、手術をしなくても良くなります。膀胱直腸障害や進行する下肢の麻痺があると手術が必要になります。でも最近は手術をすることがすごく減っています。どこでも行っている方法ではありませんが腰椎椎間板内加圧注射法という方法です。これは背中から針を刺して椎間板に水を5-20cc注射する方法です。水圧でヘルニアを外へ出すとマクロファージなどの白血球が集まって炎症作用を起こし、飛び出した椎間板を消化し無くしてしまうという理屈です。手術適応の患者さんにこの方法で治療を行うと60-70%の人が手術しなくてもすむそうです。
でもこの方法にはちょっとした問題があります。水を注入するとき「ギャーッ」と叫ぶほど痛いのだそうです。勿論局所麻酔は使います。でも痛いそうです。短時間ですが痛みに耐えられる人でなければいけませんね。
日本人の80%が一生に一度は腰が痛くて病院へ行くそうです。腰痛の話は2006年9月のコラム「腰にまとわりつくテリア犬」でも書きましたが、ちょっとおさらいをしましょう。腰痛の大部分は筋筋膜性腰痛で、筋肉が痛む状態で、いわゆるぎっくり腰の大部分がこれに入ります。他にも若いときに運動をしていた人の腰椎分離症、高齢で骨粗しょう症になった人の圧迫骨折などがあります。腰痛でも大腿部から下腿の裏がびりびりする坐骨神経痛や、足首がだらんとする麻痺が起こったりした場合は腰椎椎間板ヘルニアの疑いが強くなります。腰の骨は5つありますが椎間板は骨と骨の間にあってクッションの役割をしています。これがつぶれて背骨の後ろに飛び出すと神経を圧迫して痛みや麻痺を起こすのです。痛みはせきやくしゃみでひどくなりますが、横になると軽くなります。ひどくなると尿がでなくなったり、ひどい便秘になったりします。これを膀胱直腸障害といいます。
診断はMRIでわかりますが、複雑なものでは脊髄造影(ミエログラフィー)も必要になります。ヘルニアが起こるのは第4と第5腰椎の間、第5腰椎と第1仙椎の間に多く大部分が腰の下のほうです。
第4と第5腰椎の間のヘルニアMRI画像
腰椎椎間板ヘルニアで手術をしたという話をよく聞きます。ヘルニアというと手術と考ると思いますが、まず最初は保存療法です。1-2週間の安静、鎮痛剤投与、ステロイドの硬膜外注入、ブロック注射などがあります。この保存療法で70-90%の人で痛みがなくなり、手術をしなくても良くなります。膀胱直腸障害や進行する下肢の麻痺があると手術が必要になります。でも最近は手術をすることがすごく減っています。どこでも行っている方法ではありませんが腰椎椎間板内加圧注射法という方法です。これは背中から針を刺して椎間板に水を5-20cc注射する方法です。水圧でヘルニアを外へ出すとマクロファージなどの白血球が集まって炎症作用を起こし、飛び出した椎間板を消化し無くしてしまうという理屈です。手術適応の患者さんにこの方法で治療を行うと60-70%の人が手術しなくてもすむそうです。
でもこの方法にはちょっとした問題があります。水を注入するとき「ギャーッ」と叫ぶほど痛いのだそうです。勿論局所麻酔は使います。でも痛いそうです。短時間ですが痛みに耐えられる人でなければいけませんね。
2007年05月02日
インフルエンザワクチンの効き目
インフルエンザは如何でしたか?今年はワクチンを打ったので罹らなくて済んだと思っていませんか。インフルエンザワクチンは毎年流行するウイルス株を予測して生産され、A型2種類とB型1種類のインフルエンザに対して有効です。でもインフルエンザワクチンを打ったからといって安心してはいけません。世界でじわじわと広がっている鳥インフルエンザには全く効果がありません。また日本ではワクチンは65歳以上の健常高齢者で約45%の発病を阻止し80%の死亡を阻止する効果があり、1歳以上6歳未満の幼児で約20~30%の発病を阻止する効果があるとされています。つまりインフルエンザワクチンを打っても大人で50%位、子どもで70%位はインフルエンザに罹ってしまうということです。でもワクチンを打っていると重症化を防ぐことができます。またワクチンは接種からその効果が現れるまで通常約2週間程度かかり、約5ヶ月間で効果が消失しますから家族の誰かが罹ってからワクチンを急いで打ってもだめですし、早いほうがいいだろうと9月ごろに打っても流行時期にはもう効き目がなくなっています。また現在日本で用いられているワクチンは不活化ワクチンですので、その接種によってインフルエンザを発症することはありません。