鈴木龍太のラケットを握った外科医
http://ryuta.blog.tennis365.net/
ja
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健康食品
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/101349.html
患者さんに良く聞かれることがあります。「○○という薬を知りあいに勧められて飲んでいるんですがどうでしょう?」といったものです。勧める人は知り合いとか、親戚とか近所の薬局です。○○という薬は新聞の広告欄にでているもののイメージです。値段は結構高いものが多くて私はびっくりします。先日の患者さんはある注射をしていて1回1万円を毎週やりましょうといわれたそうです。医薬品に指定されていないものはそれだけの根拠が足りないから指定されていないのです。プラシーボ効果と言って薬ではないものも薬だと思って飲むと効くことがあります。ある頭痛薬の調査のときに本物の頭痛薬と偽者の頭痛薬を投与したことがあります。本物の頭痛薬は70%の人で頭痛が改善しましたが、偽者でも40%の人で頭痛が改善しました。信ずるものは救われるということですね。ですから一概にやめなさいとは言えません。本人が良いと思って、しかも高い値段を無理なく払えるのであれば続けてもいいと思います。でも健康食品は時々法令に違反して問題になることがあります。食品衛生法、薬事法、健康増進法、JAS法、景品表示法などが関連しています。こういう話をすると皆さんはじゃあ止めたほうがいいですねと言います。でもとても止めづらそうな顔をします。何故だろうと思います。でも話をしているうちに、紹介してくれた友達や親戚がかなり強く勧めるので、断りにくいのだということが分かります。人間関係を悪くしたくないとの思いですね。信じていない場合は最初からきっちり断ったほうが後で断るより良いと思いませんか?
2008-03-04T18:40:40+09:00
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患者さんもご協力を
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/98730.html
一時病院は医療事故やミスで散々マスコミにたたかれました。今も事故があると大変です。でも最近新聞の論調が少し変わってきました。最近読売新聞が連載していたのが患者ハラスメント特集です。看護師に乱暴したり、セクハラをしたりする患者さん、検査が正常だったので支払いをしないと主張する患者さん、手術の結果が悪いと全て医療ミスと考えて苦情を言い続ける患者さん。救急のほうが待たなくていいし、検査もすぐに受けられるからと夜になってわざわざ来る患者さん。毎日夜中に救急室へ来て自分で決めた注射をしないと帰らない患者さん。学校の給食費を払わない親や、学校にすぐに理不尽な苦情を言ってくる親をモンスターペアレントというそうですが、こういった患者さんも同様にモンスターペーシェントと言えそうです。勿論そんな人は少数です。でもそういう患者さんがいると医療者はやる気をなくしてしまいます。医療者は今、安全で安心な医療の実現に病一生懸命取り組んでいます。是非患者さんのご協力をお願いします。
2008-02-18T13:47:55+09:00
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肩の痛みに効く胃薬
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/96469.html
皆さん肩が痛くなったり、一寸でも動かすと痛くて動かなくなってしまったりしたことはありませんか?だんだん肩が痛くなってくるのは良く言う四十肩、五十肩といわれるものが多く、肩関節周囲炎といわれる病気です。肩はくるくる回したり、上へ上げたり身体の中で動かす範囲が最も多い関節です。図のように肩は骨や筋肉、腱が複雑に絡み合っています。肩関節を上にあげる時に肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)や腱板などの動きが障害され、骨頭の動きが制限されて痛みを生じます。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki_08020401.jpg" width="330" height="234" border="0" alt="肩関節周囲炎" /></p>
図:WebDoctor (<a href="http://member.webdoctor.ne.jp/" target="_blank">http://member.webdoctor.ne.jp</a>) より。
でも急に症状がでて痛くて肩が動かない場合はもう少し進んだ状態です。こういったときに肩のレントゲン写真を撮ると、肩の腱板のところに白い石灰化が見つかることがあります。 レントゲン写真では分かりにくいですが黄色い矢印の先が石灰化です。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki_08020402.jpg" width="330" height="247" border="0" alt="石灰化" /></p>
図:肩のレントゲン写真。向かって右が治療前の石灰化(分かりにくいですが矢印の先の薄くモヤモヤとしたものです)、左が治療後に石灰化が消えたところ。
このように肩の腱板に石灰化が見られるものを石灰沈着性腱板炎といいます。突然、原因もなく、激しい肩の痛みがでます。痛みのために肩と腕が動かせなくなって、腕を胸に固定した状態で苦しそうな顔をしています。このような場合はまず石灰沈着性腱板炎だと診断できますから、レントゲンで石灰化を確認します。肩を動かすときに腱板が挟まれて炎症を起こし、次第に石灰化をきたしたものです。治療はまず痛みを抑えることです。痛みをすぐに取って欲しければ局所麻酔薬を肩の痛いところに打ちます。鎮痛剤や湿布も使います。安静にしていると石灰化が消える場合もありますが、固まってしまうと中々消えません。石灰化があれば、炎症を起こし易いので再発します。
ではどうしたらいいのでしょう。一つ手があります。不思議なことにこの石灰化を消すのにTという胃薬が効くのです。朝夕一錠ずつ3週間飲むと、6,70%の例でこの石灰化が消えます。全例ではありませんし、時間がたった例はだめです。ですから発症早期に飲まなければいけません。うそみたいな話ですが学会でも報告されています。でもTの効能書きには石灰沈着性腱板炎に効くとは書いていませんし、あまり一般的に使われていません。ですから石灰沈着性腱板炎になったときには鎮痛剤と一緒に胃薬ももらうようにしましょう。
2008-02-04T22:02:00+09:00
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病院から医者がいなくなる
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/90957.html
最近地方の病院で医師がいなくなって病棟を閉鎖したとか、産科医がいなくて妊婦さんが救急車でいくつもの病院で断られたというようなニュースを良く聞きます。救急を扱う急性期病院で医者がどんどん減っています。医師は毎年7,8千人増えているのにいったいどうしたのでしょう。最近では医療の質と安全に関してどんどん要求が高くなり、急性期病院の医師は業務がどんどん過酷になり、責任も重くなっています。私の病院でも40代前後の働き盛りの医者がどんどん辞めています。開業をする人が多いのですが、最近オフィスだけあれば、在宅介護の往診をしたり、色々な病院で麻酔をかけたり、レントゲンを読んだりする形態で初期投資がすくなくても独立できるようになりました。独立しやすくなったので、そういう形で独立する人も多くなりました。います。それと研修医制度が導入されたのも一因です。医師が減ってくると残った数少ない医師で夜間の緊急患者を暑かったりしますから業務はますます過酷になるという悪循環に陥ります。何かいい方法はないでしょうか?
2008-01-07T21:54:19+09:00
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ドーピングの話
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/86734.html
皆さんご存知だと思いますが、マルチナ・ヒンギスが2007年ウインブルドン大会のドーピング検査でコカインに陽性反応を示したために、引退しました。本人は使用を完全に否定していますが、「今後の人生をドーピング取締り機関と係争するため何年も無駄にしたくない」とコメントしています。最近では陸上で有名なマリオンジョーンズが薬物使用で金メダルを剥奪されました。ドーピングの話はびっくりすることや不思議なことばかりです。そこで私の知り合いで、オリンピックのボート競技でチームドクターだった日浦幹夫先生(法政大学人間環境学部)にドーピングの怖さを書いてもらいました。
「ドーピング」の解釈は結構複雑。ありふれた点滴ひとつでも用心が必要です。
ドーピングと聞くと、真っ先に思いつくのが筋肉増強剤、男性ホルモン剤、興奮剤などの禁止薬物だと思いますが、そればかりではありません。点滴は治療目的以外は禁止ですし、血液ドーピングと呼ばれる輸血や遺伝子操作も禁止です。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/doctor_suzuki071210.jpg" width="330" height="534" border="0" alt="ドーピングの話" />
イラスト byひろき</p>
2007年8月末にドイツ行われたボート競技の世界選手権で、ロシア選手3人がドーピング違反のため出場停止となりました。その経緯を説明します。今年の7月にスイスのルツエルン(とても美しい観光地です)で行われたワールドカップ期間中に、ロシアチームの泊まったホテルのそばのゴミ箱から、薬物と静脈注射用の医療器具が入ったバッグが見つかりました。そのバッグはただちに世界アンチドーピング機構:WADA( World Anti Doping Agency ) の検査機関に運ばれて禁止薬物が発見されました。8月にボート競技の国際連盟は、ロシア選手に対していわゆる抜き打ち検査(競技外検査)を行い、また全てのロシア選手に血液検体を供与するように指示を出しました。ちなみにこのような場合は血液検体供与を拒否するだけでドーピング違反になります。結果は禁止物質や血液ドーピング、EPO(造血ホルモン剤)の注射等の証拠は認められませんでした。当局はそれでもあきらめず、全てのロシア選手の血液検体と、疑惑の器具に付着した血液のDNA検査を照合した結果、3人のロシア選手の名前が判明しました。医師の指示ではなく医学的に正当性のない静脈注射をしたことを認めたので選手はドーピング違反で出場禁止となりました。
さて、この「医学的に正当性のない静脈注射」ですが、日本でも人気のあるJリーグ選手で同様の話題がありました。ご記憶にある方も多いと思います。この選手に行われた静脈注射は「医学的な正当性がない」と判断され、ドーピング違反でペナルティーが課されました。これに対して、担当したチームドクターは「医学的に正当性がある」と主張、反論してペナルティー撤回を要求したそうです。この事例から感じたことは、「静脈注射の医学的な正当性」を判断することは難しいということです。医師の関与がなかったロシア選手の事例と、医師の関与があったJリーガーの事例は同列には語れませんが、いずれの事例でも選手が静脈注射に関するドーピング規定を知らなかった、あるいは規程を無視したために生じた問題です。そこで重大になってくるのが、スポーツ選手のケアをしている医師の認識と対応です。もしも医師が間違えたためにドーピング違反が生じたとしたら、ペナルティーを負うのは選手であり、社会問題に発展してしまいます。風邪薬一つでも慎重にしなければなりません。
余計な心配かもしれませんが、スポーツ選手の皆さんが薬の処方や点滴を受ける場合は、自分も良く勉強し、医師ともよく相談し、慎重な行動を取りましょう。
法政大学 人間環境学部 日浦幹夫
2007-12-10T20:39:01+09:00
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患者様と患者さん
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/84486.html
最近病院へ行くと○○様と様付けで呼ばれませんか?日本の医療は以前から医師が治療の主導権をもち患者に指導するという立場でしたが、説明不足や医療事故が頻発して4,5年前から患者中心の医療という概念が導入され、その頃から患者様と呼ぶようになってきました。その概念も最近変化してきて患者も含めた医療チームみんなで患者の健康を支えようという考え方になってきました。その場合は患者様ではなくて患者さんと呼ぶことになります。その二つの考え方を図にしてみました。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki_071126.gif" width="330" height="230" border="0" alt="患者様と患者さん" /></p>
貴方は患者様と患者さんとどちらで呼ばれたいですか?
2007-11-26T17:20:45+09:00
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頭痛と上司
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/82350.html
私は脳神経外科医ですから頭痛の患者さんを多く診察します。頭痛には脳卒中や脳腫瘍など脳の病気があって起こるものと、そうではない機能性頭痛があります。機能性頭痛の代表的なものは片頭痛と緊張性頭痛です。片頭痛は若いときから月に一度くらい頭の片方がズキンズキンと痛くなります。女性に多く生理痛も片頭痛の一種と考えられています。緊張性頭痛は疲れやストレスで筋肉が硬くなって起こる頭痛で頭が締め付けられるように感じます。肩こり、眼性疲労、姿勢、首の骨の問題、かみ合わせなどでもなります。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki071112.gif" width="330" height="164" border="0" alt="頭痛と上司1" /></p>
緊張性頭痛の人を診察するとき、たいてい「何かストレスがありますか?」と質問します。特に30代前後の人には「仕事が大変ですか?」とか「嫌な上司がいませんか?」と聞くと「そうなんです」と納得の返事です。子供の小さい女性では子育てがストレスになり、中高年女性では退職して家にいるご主人がストレスになることがあります。年齢に関係なく、家族や恋人など人間関係のトラブルがあって、話しを聴いているてうちに涙声になってしまう患者さんもいます。
ではなぜ嫌な上司や人間関係のトラブルで頭が痛くなるのでしょうか。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki07111202.jpg" width="252" height="330" border="0" alt="頭痛と上司2" />
イラスト byひろき</p>
以前のコラムにも書きましたが、脳の中で快・不快を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の中枢である海馬や、情動を感じる扁桃体があります。扁桃体の刺激は視床下部という場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分はセロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。嫌な上司というのは最初から嫌だったわけではありません。何かのエピソードがあってその上司を嫌だと思うようになったわけです。このエピソードを記憶しているのが海馬です。嫌な上司を前にすると海馬が嫌な記憶を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。ときには安定剤を寝る前に飲んでもらいます。これは精神的にストレスを除くためだけではなく、寝ている間に筋肉をリラックスさせ、気持ちの良い朝を迎えるためです。海馬や扁桃体は嫌な上司を見ただけで反応を起こし交感神経を刺激しますから、嫌な上司からはなるべく遠ざかって見えないところにいたほうが良いと思います。
2007-11-12T19:47:35+09:00
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責任の所在
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/80190.html
脳外科外来で小中学生の患者さんのご両親から良く頼まれることがあります。体育の授業に出ていいか診断書を書いてほしい、診断書がないと学校が修学旅行に行かせてくれないなどです。薬を飲んでいる場合や飲んでいない場合もありますが、症状はないので特に行動の制限はありません。学校としては体育の授業や、修学旅行で何かあったら学校が責任を取らなくてはいけなくなります。一方医者が診断書を書いて許可すれば今度は医者に責任があるということになります。医学的には抗けいれん剤を飲んでいる場合は車の運転はやめてもらっていますし、水泳も控えるように進めています。そのような場合には明確な内容の診断書を書くことができます。また骨折などで1ヶ月は運動が出来ないような場合はきちんとした診断書を書くことができます。それ以外は自分の調子に合わせて少しずつ慣らして身体を動かすように指導しています。折角楽しみにしている修学旅行をやめるほどの症状ではないのに、診断書の書き方によっては学校は修学旅行に参加させてくれないかもしれません。本人はできるのに、学校やご両親が本人の意に反して体育を休ませたり、修学旅行に行かせなかったりして行動を制限することは良いこととは思えません。ご自分のお子さんですから、ご両親が責任を持つと学校に伝えて行動にあまり制限を加えないほうが懸命だと思うのですがどうでしょうか。
2007-10-29T18:14:20+09:00
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友達とメタボリック症候群
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/79147.html
今盛んに言われているメタボリック症候群。全国で2000万人くらいが当てはまるそうです。メタボリック症候群の基準は以下のようになっています。貴方はどうですか?
<div style="border:1px #000 solid; padding:5px; font-weight:bold;">腹囲(必須) 男性85cm以上 女性90cm以上
以下のうち二つ以上
1.血圧>135/85mmHg
2.中性脂肪(TG)が150mg/dl 以上もしくは善玉コレステロール(HDLC)が40mg/dl以下
3.空腹時血糖 110mg/dl以上</div>
本来は内臓脂肪が多い人が対象なのですが、内臓脂肪は腹部CTをしないときちんと測れません。そこで腹囲を代用として使うことにしたわけです。腹囲といってもズボンのウエストではありません。おへそのところかお腹で一番出っ張ったところを測ってください。
メタボリック症候群だと心筋梗塞になる危険が約3倍、糖尿病になる危険が5-10倍あるそうです。若いうちからこれを意識して肥満、生活習慣を改善することで個人の健康を維持し、さらに日本人の使う国民総医療費を削減できるというわけです。
ポイントは肥満に加え今までは病気と言わなかった正常上限レベルの項目が2つ以上あれば病気予備軍として扱うといことです。
最近ハーバード大学から面白いデータが発表されました。配偶者が肥満だとそうでない人に比べて肥満になる確率が37%も増えるそうです。夫婦の場合は食生活が同じですから理解できます。夫婦になるとなんとなく印象が同じように見えてくるのもこれが一因ではないでしょうか。でも更に驚くことに友達が肥満の人はその人が遠く離れていても肥満になる確率が57%も増えるのだそうです。男性の友人同士だと100%増加しますが、女性同士だと38%、異性では相関関係はないそうです。肥満になりたくなければ配偶者と同性の友達をちゃんと選べということです。でも離れた友達も肥満に影響するとは何と不思議なことでしょう。同様の姿をみることで安心するのでしょうか?人間の心理と身体の関係は奥深いものがありますね。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki20071022.jpg" width="329" height="264" border="0" alt="友達とメタボリック症候群" />
イラスト by ひろき</p>
こうなるとテニス仲間も選ばないといけませんね。そういえば私が太ったのもAという太った友達ができた頃だったような気もします。皆さんも誰かのせいにするのは簡単ですが、決してその人のせいだとか思ってはいけません。あなた自身の責任を忘れないでください。
2007-10-22T19:17:15+09:00
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医者の特権
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/75948.html
皆さん医者の一番の特権は何だと思いますか?高収入とか、仕事がちょっとカッコよさそうというのは違います。そういう人もいますが、私の周りの勤務医たちはたいてい金持ちではないし、仕事も大忙しでなりふり構わずに頑張っています。それでは医師の特権とは何でしょう?普通の人は刃物で人を切りつけると犯罪です。でも医師は違います。手術や検査で人を切りつけますし、点滴で針を刺します。それから医師は麻薬や睡眠薬を使うことができます。これも医師でない人が使えば犯罪です。こうやって見ていくと医師は通常だったら犯罪になる行為を行っても良いという特権を持っていることが分かります。前にも書きましたが病院は善人の集まりでなければ成り立ちません。悪意のある人が病院で働いていたら犯罪と気付かれずに完全犯罪を実行することができます。現場の医師たちはこのことをしっかり認識し、自分たちが持っている特権は本当に必要なときに正しく使われるべきだと肝に銘じて治療に当たる必要があります。
2007-10-01T21:26:31+09:00
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ホールドアップで病気が分かる
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/74354.html
「手を挙げろ!!」と突然言われたらたいていの人はイラストのように肘を90度曲げて手を挙げます。肩関節を90度外転・挙上し、肘関節を90度屈曲した姿勢です。この姿勢をしばらく続けていて手が白くなってきたり、指先が痺れてきたら胸郭出口症候群という状態です。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/suzuki_070925.jpg" width="329" height="278" border="0" alt="ホールドアップ" />
イラスト by ひろき</p>
首の付け根から腕に移行する部分を胸郭出口といいます。ここには動脈や静脈などの血管と頚部脊椎から出た数多くの神経が通っています。更に頚椎や鎖骨、肋骨などの骨があり、骨と骨の間を沢山の筋肉が橋渡ししています。この部分は広い胸郭から細い腕へ色々な構造物が集まってきます。道路が急に狭くなって壁に囲まれてしまったような状態です。筋肉の炎症が起こったり、腕が引っ張られて出口が狭くなると神経や血管が圧迫されて色々な症状が起こります。これが胸郭出口症候群です。胸郭出口症候群では首や肩、腕の痛み、肩凝り、腕のだるさ、手のしびれ、手が冷たいなどの症状がでます。腕を上げていると手先が痺れたり、手が白く冷たくなったりします。電車のつり革を握っていて手がだるくなったりしませんか?
胸郭出口症候群は女性では20-30代、なで肩で首が長く、肩や腕の筋力がない人に多く、そういう人では腕の重さで神経が引っ張られて神経炎を起こして症状がでます。男性では筋肉質で肩や腕の筋肉が緊張していて柔軟性がない人に多く、そういう人では筋肉で神経や血管が圧迫されて神経炎や血行障害が起こり症状がでます。猫背や姿勢の悪い人もなりやすく、仕事でパソコンを長時間使用していると猫背になりますから同様に症状がでます。筋トレもやりすぎるといけません。筋トレ後に十分なストレッチをしないと胸郭出口症候群になります。
診断は手首の親指側の脈を触れながらイラストのようにホールドアップの姿勢をとってもらい、更に胸を広げるように腕全体を後ろへ引っ張ります。その姿勢で手首の脈が触れなくなれば胸郭出口症候群と診断できます。これをWright testと言います。また同様の姿勢でグーパーを3分間続けられるかどうかを見るテストもあります。
症状がひどい場合は消炎鎮痛剤や筋弛緩剤、ビタミンB12を飲んだり、温熱療法や神経ブロックの注射を行うこともあります。頚肋といい第7頚椎から肋骨がでている場合などは手術で治療する場合もあります。予防のためには首と肩の筋肉を鍛えることとが必要ですし、ストレッチが大切です。肘を曲げた状態で腕を回すストレッチや、首を回すストレッチが有効です。いざというときのホールドアップに耐えられる強い身体を作りましょう。
2007-09-25T18:15:18+09:00
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セカンドオピニオン
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/73080.html
最近よく聞きますね。自分の罹っている主治医ではなくて第3者の医師に診断や治療法の意見を聞くものです。ここで間違えてはいけないのはセカンドオピニオンはあくまで意見であり、そこで治療や入院はできないということです。通常主治医から紹介状や検査データをもらって行きます。最近色々な病院でセカンドオピニオン外来というものが開設されています。でも気軽に行くと大変です。セカンドオピニオンは健康保険の適応ではありませんから自費になります。料金も様々である大学病院では1時間4万円のところもありますし30分3千円の病院もあります。よく調べてから行ったほうがいいですね。患者さんにとっては主治医にセカンドオピニオンに行きたいと言い出すのはなかなか難しいものですし、医者によってはあからさまに嫌な顔をする場合もあります。でも今時セカンドオピニオンに嫌な顔をする医者は信用できない医者だと思っていいと思います。自分の病気を治すためですから勇気を出して言ってみましょう。でももう一つ問題があります。どの医者にセカンドオピニオンを聞いたらよいかという問題です。主治医に紹介された医者の場合は主治医と知り合いだったりすると客観的な意見が聞けないかも知れません。マスコミに取り上げられている医者も必ずしも専門ではない場合があります。インターネットで調べたり知り合いの医療関係者に尋ねるといいかもしれません。なかなか難しいものです。
2007-09-18T13:23:00+09:00
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希望と絶望
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/70804.html
希望と絶望の図(心理図解シリーズ1)
「人はなぜ苦しむのか」と考えたことがありますか。先日長年ホスピスの医師であった小澤竹俊先生の講演を聴いて少し理解できました。ホスピスで命が限られて苦しんでいる多くの人たちと接してきた小澤竹俊先生は「人間の希望と現実のギャップ」が苦しみを生み出すと説明されました。先生は全国の中学生に向けた講演を続けていらっしゃるそうで、なるほど分かり易い表現だなと思いました。
ここで私なりの解釈で希望を理想と言う言葉に置き換えて図に表してみました。
<a href="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/kurushimi.gif" target="_blank"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/kurushimi_s.gif" width="313" height="229" border="0" alt="苦しみの構造" /></a>
この図をテニスに当てはめて見ましょう。大会の優勝(理想)と実力(現実)はたいていの人でかけ離れています。絶対優勝できる実力を持っている人は稀でしょうし、どんな人でも試合に負けることがあります。それでもどんどん落ち込んで絶望してしまう人と、めげずに希望を持って頑張っている人がいます。その違いは何でしょうか?それは実力の時間的変化に関係していると考えられます。練習や試合で実力はどんどん変わります。そこでこの変化の曲線を微分してみましょう。数学は大嫌いだったから微分と言われても・・・とか微分って何だっけと思われる方も多いと思いますからちょっと説明します。曲線のある点での接線を書いたときにその傾きを求める方法が微分です。
さて元に戻って、実力(現実)の変化曲線を微分すると上に向く場合と下に向く場合があることが分かります。上に向いた矢印であれば希望が沸きます。下向きの矢印になると絶望してしまいます。この関係を希望と絶望の図にしてみました。現実は上を向いたり、下を向いたり刻々と変化します。それにあわせて「ヨシッ!!頑張ろう」と奮起したり、「もう駄目だ」と落ち込んだりするのです。
<a href="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/kibou.gif" target="_blank"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/kibou_s.gif" width="313" height="216" border="0" alt="苦しみと希望の構造" /></a>
<a href="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/zetsubou.gif" target="_blank"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/zetsubou_s.gif" width="316" height="216" border="0" alt="苦しみと絶望の構造" /></a>
どうですか、少し自分の心理状態がわかったでしょうか?現実を振り返ると人間は絶望することのほうが多いかもしれません。次はどんなに絶望しても希望を持てる心理を考えて見ましょう。
参考文献:
小澤竹俊著 苦しみの中でも幸せは見つかる 扶桑社 2004年
小澤竹俊著 13歳からの「いのちの授業 大和出版 2006年
2007-09-03T16:10:27+09:00
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子どもの解熱剤
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/68551.html
子育てをしていると子供の病気が一番心配です。子供の病気にははしかやおたふくかぜなど高熱を出すものが多く、冬にはインフルエンザやノロウイルスでも高熱をだします。
今年ははしかが大流行しました。熱が高く、ぐったりして苦しそうな我が子を見るのは辛いものです。高熱で熱性痙攣を起こすのも心配です。そこで下熱剤を飲ませることになります。では下熱剤なら何でもいいのかというとそれは違います。子供がインフルエンザやウイルス性疾患のときにアスピリンなどのサリチル酸系の下熱鎮痛剤を使うとライ症候群という死亡率が30%もある脳の病気になることが分かり、使用禁止になっています。アスピリン系でなくても下熱しすぎで低体温になってしまったりします。子供に安心な下熱剤はアセトアミノフェンというものに限られてしまいます。大人の風邪薬を量を減らして飲ませれば良いというわけではありませんから十分注意してください。それから実際下熱剤で熱が下がったからといって病気が治ったわけではありません。辛い症状を押さえてその間に体力を回復してもらおうという方法です。ですから高熱があっても薬を使わないで暖かいものを食べて、体を冷やして自分の力で自然に熱が下がるのを待つというのも一つの方法です。
2007-08-20T16:02:58+09:00
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スピンと手首
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/66144.html
最近コラムに「中川」さんから質問がありました。「肘でなく手首が痛いのですが、最近スピンをかけようとワイパーのようにスイングしています。つけ根あたりが、ドアノブを回すような動きをしときに痛みます。なにが悪いのでしょうか」。というものです。
腕の骨は肘から手首まで2本の骨で繋がっていて、親指側を橈骨(とうこつ)、小指側を尺骨(しゃっこつ)といいます。手首の手前でこの橈骨と尺骨が接していてその部分を遠位橈尺関節といいます。スピンをかけようとして手首をひねるとこの遠位橈尺関節を軸として橈骨と尺骨が回転してこすれます。これを繰り返すと遠位橈尺関節の炎症が起こります。また尺骨と手の骨の間に線維性三角軟骨複合体(TFCC)と呼ばれる部分があります。骨と骨の間の隙間ですが、遠位橈尺関節も一部含まれ、手首の関節の動きをスムーズにしたり、衝撃を吸収するクッションの働きをしていて関節円板とも言うそうです。このTFCCが捻挫や打撲で痛むとTFCC損傷になります。また、同部に過度の同じ動作の繰り返しで起こる手首の痛みも、このTFCC部分の炎症と思われます。TFCC部の痛みの特徴は手を回したときに痛みが生じることです。ドアのノブを回したときに痛いという症状は典型的なTFCC部の炎症と考えられます。
では治療法はどうしたら良いのでしょうか。まず第一にやらなければいけないことは手首をひねらないことです。当たり前だけど中々できません。そういう方にはテーピングをお勧めします。写真がテーピングの捲き方です。
<p style="text-align:center;"><img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/taping01.jpg" width="330" height="432" border="0" alt="テーピング1" />
<img src="http://ryuta.blog.tennis365.net/image/taping02.jpg" width="330" height="432" border="0" alt="テーピング2" /></p>
テーピングは伸びるテープで写真のように螺旋状に巻きます。ドアノブをまわすときに右回しか左回しかどちらで痛みを感じるかで巻き方を変えます。痛みを感じる方向に手首が動かないようにテーピングします。上の写真は外側(小指側)にノブを回したときに痛みを感じる場合の巻き方で、下が内側(親指側)にノブを回したときに痛みを感じる場合の巻き方です。場合によってはギブス固定やギリシャ戦士の鎧のような装具(手関節固定装具)を使い動かなくします。中川さんも試してみてください。でもスピンはしばらくお休みです。
2007-08-06T19:54:00+09:00